「ChatGPTの導入について~最新のテクノロジーを職員皆で体験する~」をテーマに、横須賀市役所のデジタル・ガバメント推進室の寒川孝之室長に聴取しました。

総務常任委員会の所管事務調査「生成AIが与える行政運営への影響に関する調査」の行政視察第1弾の2日目として、1月30日㈫に横須賀市役所を訪ね、「ChatGPTの導入について~最新のテクノロジーを職員皆で体験する~」をテーマに、デジタル・ガバメント推進室の寒川孝之室長から取り組み内容について伺いました。

はじめに、2022年11月に一般公開されたChatGPTは、OpenAI社が開発した対話型AIで、インターネット上の大量のテキストデータから学習し、その結果、人間が書いたような自然なテキストを生成する能力を持つようになったこと。ただ、注意しなかればならない点は、「ChatGPTは入力する文章(言葉)に対し、続きそうな文章(言葉)を確率的に返す機械で、ChatGPTは意味を理解しているわけではない」ことについての説明がありました。

横須賀市の場合、ChatGPT利用環境は、①LoGoチャットでの入出力⇔②市で用意したサーバー(職員の内製化)経由のAPIでの問合せ・回答、履歴蓄積⇔③ChatGPTという状況にあることの説明がありました。

まず、LoGoチャット導入は、2020年4月にコロナ対策で保健所の業務が逼迫していた本庁舎と離れた保健所の迅速な業務連絡・情報共有のチャットツールとして行いました。

次に、Chat GPT導入は、2023年3月頃から報道各紙が「ChatGPT」を大々的に取り上げていた中で、3月29日、市長から「ChatGPT 面白いから行政で活用できるよう考えるよう」指示があり、5日後の4月3日に「ChatGPT活用検討チーム」を立ち上げたということです。

ChatGPT導入のためのセキュリティ面での検証がされ、 ①ChatGPTに入力した内容が外部に漏れるのが心配 ②セキュリティ上、そもそも市役所の業務端末からChatGPTにアクセスできないなどが出る中で、「LoGoチャットで簡単にChatGPTを使えるようにする」という方向性が決定しました。

LoGoチャットと連携することの利点は、ChatGPTへの業務での入り口をLoGoチャットへ集約することで、シャド-ITの排除を目指す。これで、ChatGPT導入のキュリティ面での不安解消ということになりましたが、さらに横須賀市ではセキュリティ面での3つの対策がなされました。「①API経由の場合は、入力情報は学習には使われない(Open AI社の規約) ②入力情報を学習に使われないよう、オプトアウト申請する ③職員に機密情報や個人情報を入力しないようルールを作り周知、指導する。」それでも、個人情報の漏洩を心配する一部マスコミの声に対しては、「次元の異なる話です。市役所が住民基本台帳・税の情報をChat GPTに学習させるわけではありません。Chat GPTに個人情報を入力する職員がいた場合、そもそも情報セキュリティポリシーを遵守していないので、その者にパソコンを触らせること自体が大問題です」と説明して、ご納得いただいたといいます。

【2023年4月20日から ChatGPT実証】

➊4月20日(木) ChatGPT活用実証開始

❷4月27日(木)~5月2日(火) 第1回中間アンケート

➌5月15日(月) チャットGPT通信 創刊号 配信

❹5月23日(火)~5月29日(火) 第2回最終アンケート

6月5日(月)には、実証結果報告をして、ChatGPTの本格導入となりました。この実証の経費は、人件費除くと1万円弱でした。

この間実施した❷と❹の2回のアンケート結果を紹介いただきました。

まず、4月21日からの庁内の電子掲示板において実施した第1回中間アンケートでは、対象職員:約3,800人(LoGoチャットが利用可能な全職員)の内、693人が回答(回収率:約18%)。

◆全体的に導入に前向き

・約50%の職員がある程度利用している。

・80%以上の職員が、「仕事効率の向上につながる」と回答。

・60%以上の職員が、ChatGPTの利用意向あり。

(※「今後使わない」は4%)

◆利用方法に課題がある

・検索など、ChatGPTにあまり向かない利用をしていることが多い。

・職員が上手な質問をしなければ「適切でない回答」、「精度の低い回答」が出てきてしまう。

この中間アンケートの結果から、直ちに職員の利用方法についてテコ入れが必要として、5月15日に「チャットGPT通信」を創刊して、便利な使い方・注意事項・ミニ問題などを掲載。今後も定期的に発行し、職員のスキルアップを図っていくことになりました。

次に 5月23日(火)からの第2回最終アンケート結果についてです。

◆ ChatGPTは、一定の利用率があり、業務効率向上の実感、継続利用意向も高くて、導入に前向きな傾向

・利用の仕方に課題あり、不安の傾向。

・ チャットGPT通信による啓発効果により、中間アンケート時点から改善は見られるが、まだ利用の仕方に課題が残っている。

・ ChatGPTが得意な用途でない「検索」に多く使われている→ 正しい利用方法を引き続き周知していく必要がある。

・4割強の職員が適切でない答えがあるとの認識→ ChatGPTに対してまだ良い質問ができていない可能性がある。今後、研修等で職員の質問スキルを上げていく必要がある。

・5割近い職員が回答の精度に対する不満→ より精度の高い回答を得るために、ChatGPT-4の導入を検討する必要がある。

 

「生成AI開国の地」となった横須賀市のChatGPT導入以降の取り組みを紹介いただきました

〇展開1 横須賀市AI戦略アドバイザーを配置しました。

ChatGPTを含めたAI技術は急速に進化し、社会も急速に変化しています。

そこで、横須賀市は、この分野の第一線で活躍する「深津貴之」氏をAI戦略アドバイザーとして迎えることで、この変化に適応し、より適切なAIの活用を推進していきます。なお、深津氏は横須賀市出身です。

〇展開2 職員の更なるスキルアップを図ります。

ChatGPT通信を継続して発行していくとともに、AI戦略アドバイザーである、深津貴之氏の監修による横須賀オリジナルの「(仮称)GPT活用スキル強化プログラム」を導入し、職員の活用スキルの底上げを図っていきます。

・第1回研修 2023年7月27日、第2回研修 2023年8月8日に実施。

〇展開3 横須賀市のノウハウを積極的に他自治体に伝えていきます。

横須賀生成AI合宿型研修の開催。4月20日に活用実証を始めて以降、100を超える自治体からの問い合わせを頂いています。

講演会等でも、横須賀市が蓄積した情報は積極的に公開していますが、より深くその本質をお伝えするため、これまで蓄積してきた導入から活用までのノウハウをパッケージ化し、他自治体への研修を企画していきます。

※前述の帆船の絵はAIにイメージを伝えて描かせたものです。

【最後に、新たな取り組みとして、次の5点を紹介いただきました】

①問い合わせ応対ボットの運用開始。

②生成AI活用のためのポータルサイトを開設。・2023年8月29日横須賀市とnote株式会社が連携し、自治体が生成AIに関する情報を共有するポータルサイト「自治体AI活用マガジン」の運営を開始した。このポータルサイトには、横須賀市と10の生成AI先進自治体が参加し、最近は19自治体になりました。全国の自治体に向けて生成AI導入に関する情報や活用事例を発信しています。

③株式会社アイネスとの相談業務における生成AIの活用における実証実験。サービス概要は、自治体における住民相談を対象に、音声認識やデータ分析技術等のAI活用により、相談員の業務【対面相談】【電話相談【訪問相談等】を支援するトータルサービス。

④ChatGPT活用コンテストの開催。ChatGPTを活用した好事例の横展開や職員のモチュベーション向上のため。なお、11.20 ChatGPT活用コンテスト優秀賞受賞事例は、横須賀市公式YouTubeで公開中です。最初は、文章作成に使っていたのが、もう仕事のアイコンとして使っているケースが多いとか。たとえば、軽自動車申告書の年度更新とか印刷スケジュール、研修を進める手順をChatGPTで作らせた事例等もアップしてあります。

⑤AIを活用した建築確認申請ルールの自動判定システム共同実証実験を、昨年10月から株式会社mignおよび戸田建設株式会社と共同で実証実験を実施中です。