「吾妻五葉松Bonsai展」でのデモンストレーション。3代目の盆栽作家・阿部大樹さんの技に参加者の視線が集まりました。

3月29日㈮・30日㈯にコラッセふくしま3階企画展示室で、日本3大五葉松のひとつ「吾妻五葉松Bonsai展」が開催されました。

2日間に渡り、吾妻山の麓で3代にわたり盆栽を作り続ける「ぼんさいや『あべ』」による吾妻五葉松の盆栽の展示とデモンストレーションが行われました。主催は福島市観光コンベンション協会で、昨年に続いて3回目となり、2日間で延べ約300人が訪れました。

30日土曜日の午後に訪れた時は、3代目の盆栽作家・阿部大樹さん(写真)の吾妻五葉松盆栽のデモンストレーションが始まったところでした。

まず、畑で育てた実生51年の吾妻五葉松の鉢植えの正面を決める作業からです。「後ろに枝のない部分は正面にしない。奥行きが出ないから。」次に、一つ一つの枯れた枝の跡を“彫刻”する作業。そして、今回のデモンストレーションのメインとなる、枝を折らないように下げていく作業です。ラピア(麻)で縦に芯を入れ、思いっきりグーッと下げていきます。

前列で見学していた方に作業を手つだっていただく場面もありました。

やがて、「薄っすらと盆栽っぽくなってきましたか」と、大樹さん。

90分間がアッという間でした。吾妻五葉松の盆栽のあらづくりが完成しました。デモンストレーションが終わった後も、大樹さんを囲んでの参加者との質問等のやり取りが続きました。

祖父の故阿部倉吉氏は、皇居の盆栽も手がけた盆栽界の第一人者で、その著書『五葉松盆栽の作り方』はイタリア語版はじめヨーロッパで数カ国語に翻訳され、その技術は海外でも高い評価があります。会場には、2代目の師匠で父親の阿部健一氏も案内をしていらっしゃいました。

後日談ですが、3月4日に「ぼんさいや『あべ』」の作業所をお訪ねしました。

今回の企画の1週間前には阿部健一さんと大樹さん親子は、ユニオン・ボンサイ・イタリア(UBI)に招待されて全国大会が開催されたイタリアのフィレンツェの展示会にいました。師匠の阿部健一さんはここでの盆栽展の審査委員を頼まれたといいます。

会場には、ローマから電車で5時間かけてやってきたというボンサイ愛好家がいたり、「阿部先生のお父さん(故阿部倉吉氏)の本をみんなで読んでいます。サインをお願いします」と話しかけられたり、ボンサイ歴が4,50年の方もいたりして、イタリアでのボンサイ文化の広がりを感じたそうです。

イタリア滞在は2週間ほどになり、国内3か所を巡り、ワークショップや展示会でのデモンストレーションをこなしての帰国でした。そして、疲れを取る間もなく、今回の企画となったわけです。3世代にわたり続く海外交流のお務め、本当にお疲れさまです。