釧路市の「生活保護受給者自立支援の取り組みについて」行政視察に行ってきました。

6月27日㈫、会派の行政視察で釧路市役所を訪ね、釧路市生活福祉事務所の方から生活保護受給者自立支援の取り組みについて伺いました。以前、NHKの「ニュース9」の特集で紹介されていて、ぜひ、直接話を伺いたいと思っていましたら、早々に叶いました。

釧路市は、生活保護者が北海道内でも最も高い水準です。まず、担当者からは「市民約20人に一人が被保護者である現状において、被保護者の自尊感情を回復し、地域社会の一員として活躍してもらわなければ、まちづくりが成り立たない」という差し迫った状況にあることを伺いました。

背景には、長く市の経済を支えてきた基幹産業の漁業の衰退、炭鉱の閉山がありました。

特に、釧路市においては全保護世帯における母子世帯の比率が高く、他自治体の8パーセント程度に比べ2倍の16~17パーセントに達しています。

2003年に厚労省から母子世帯対象のモデル事業実施の打診があり、2004年~2005年までの2年間にわたり生活保護自給母子世帯対象の自立支援のモデル事業を実施。この時のワーキンググループでの議論を経て、被保護者の「自尊感情の回復」や「エンパワーメント」、当事者の力を高めることの必要性を行政サイドが理解し、実践へと踏み出したことがその後の転換期となりました。

モデル事業の実践からわかったこととして、以下3点挙げました。①受給母子世帯の母親の4割は中卒ないし高校中退であり、職業訓練や資格取得の必要性があること。②保護世帯の母親と非保護世帯の母親の子どもの進路に対する考え方の乖離があり、貧困の連鎖を断ち切るため、子供への学習支援、居場所が必要。③従来の管理・監督型の生活保護制度による被保護者の自尊感情の喪失・勤労意欲の低下から社会参加を促すエンパワーメントの必要性、です。

この2年間のモデル事業の経験を踏まえ、2006年度から全保護世帯を対象に自立支援を開始。釧路市の自立支援プログラムおよび事業の特徴は、保護自給者本人の希望を取りながら、まずはボランティアへの参加を促すことにありました。

受け入れ先は、市内のNPO法人・企業など「パートナー事業者」約20社です。無償奉仕から稼働収入まで多様な働き方(中間的就労)を設定し、生活保護自給世帯の〈日常生活自立〉➡〈社会生活自立〉〈就労自立〉を目指します。

釧路市の特徴は、「一足飛びに就労から保護廃止に結び付け、短絡的な成果を目指す」のではなく、「当事者の置かれた状態に合わせて、少しずつ就労への意欲、日常生活の自立、社会参加への意欲を滋養していくことにあります。また、この間、SROI〈社会的投資収益率=事業が生み出す価値÷事業に投じられる資源〉という評価手法を用い、受給者の無償ボランティアの頑張りや成長をわかりやすく数値で可視化を目指し取り組んでいます。今後、注目されます。

釧路市のこの間の取り組みが実を結び、平成27年度の道内主要都市7市の中では一人平均の扶助費単価が一番低く抑えられました。これは生活保護を受けながら仕事をしている(中間的就労)の稼働率が道内一であることを示しています。「受給者は多いけど、働いています」という改善状況が生まれているということです。

最後に、平成27年4月から「生活困窮者自立支援法」が施行されたことにより、生活保護に至る前の段階の自立支援強化を図るため、生活困窮者に対し、生活相談支援センター「くらしごと」を中心に自立相談支援事業等の実施をしていることを説明いただきました。